moto’s diary

薬嫌いの薬剤師。ほんとうの事以外いらない。

娘が産まれた。

予定日1ヶ月前から3000g近くあり、おそらく予定日前には出てくるだろうと周囲は予想していたがほぼ予定日通りの出産となった。

現代的に巨大児である事は分かっていたものの、そこに至るまでのあまりのスムーズさにスーパー安産で何事もなく終えられると楽観していた。

6/13〜14の日付けが変わるかどうかの所で破水。

どうせ陣痛が起きるまで病院で待機するぐらいであれば出来る限り家にいたい。2人でうたた寝をしながら朝まで陣痛を待つが来ない。

流石に病院に行った方がいいと入院。そこから陣痛待ちが始まったのも束の間、1時間程度待ったものの破水時刻からカウントしてこれ以降の陣痛待ちは帝王切開の可能性が上がるとの事で陣痛促進剤投与が開始された。

徐々に痛みが増して来たとの内容を最後に既読がつかなくなる。次に既読がつく頃にはおそらく生まれているのだろうとその報告を待っていた。

嫁からのLINE通話が来てはじけるようにどうだった?と聞いたが出たのは産婦人科の看護師だった。

「赤ちゃんが苦しい状態になっているので帝王切開する事になりました。今来られますか?」

それ以降俺はハイしか言っていない気がする。病院について主治医の長い承諾許可証の説明すらも早くやってくれの一心でハイを繰り返していた。

青褪めた嫁を横に形式上の手続きを済ませるためだけに存在する俺はハイを繰り返した。

30分程度で終わると言われ、駐車場にて待機している間、頭が真っ白になりながらこの想定外の帝王切開というものを調べてしまった。最初にヒットした内容が赤ちゃんの救命率が大幅に上がる代わり、母親の死去率が生まれるというものだった。

1.8%

この数字に飲み込まれた。あり得る。1.8%なら引く可能性がある。スロッターの安直な発想だったのかもしれない。だが、ここまで想定外の事象が続くともはや思考回路は最低な方向にしか働く事ができずに、涙が出てきた。

 


もう子供はどうなったっていいから嫁の命だけは助けてくれ

 


本気でそう思ってしまった。頭の奥では違うと思っても振り切れない。

俺に何ができる?何もできない。ネガティブな波動を微塵も出さなければどうにかなる事なのか?情報の整理すらままならない。ならば何も見るまい。考えまい。

ひたすらに目を閉じて深呼吸を繰り返す。

無意識に手を組んでいた。こんな時に限って神頼みはダサすぎる。そんな事言われてももう祈るしかない。

 


地獄の2時間だった。ここ数年感じることのなかった不安と恐怖を凝縮したような時間だ。

電話が鳴る。

赤ちゃんの泣き声が聞こえる。

聞こえますか?

聞こえてます。

最低だろうが最悪だろうが構わない。俺が知りたいのは嫁の安否だ。

看護師さんが平和な雰囲気で持ってきた初めて見る我が子、我が娘に感動するよりも前に、嫁がどうなったのかが気になりすぎて娘に集中できなかった。

管まみれでベットに横たわった嫁は、手術中にちょっと吐いちゃった。と言った。

ありがとう。ありがとう。ありがとう。

母子共に無事だと言われた。

しかし腹を切ったのだから当然まだ完全に安心は出来ない。本来なら1滴の薬でさえ許容できないが、救命救急において流石に西洋医学には太刀打ちできない。

嫁には陣痛の痛みに加え開腹の痛みまで味あわせてしまった。全て俺の責任だ。ミスは必ず探し出す。

 


娘を見てから出て行きなと言われた。

保育器に入った娘を見つめる。

 


デカイ。

 


3700は伊達じゃない。頭も手もデカイし胸板も厚い。そのくせ下半身にかけてほっそりしていく。そして足はやっぱりデカイ。

ムッチムチ。栄養過剰にしすぎたせいかもしれん。

やーんかわいいー💕💕💕

 


立ち会いが出来ない事をゴネていたが、まさか君が俺を呼んでくれたのか。命かけてまで。馬鹿なことをしやがって。本当にありがとう。一瞬でも君の事を捨ててもいいと思ってしまった事を一生かけて詫びる。だから、これからよろしくな。